はじめに
気候変動は今日、私たちが直面している最も差し迫った課題の一つです。多くの企業が環境保護の取り組みに力を入れていますが、テクノロジー業界のリーダーであるAppleは、2030年までに企業活動を通じてカーボンニュートラルを達成するという野心的な目標を掲げています。
カーボンニュートラルとは?
二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量と植林などによる吸収量が等しく均衡している状態を指します。この目標を達成するためには、排出量の吸収、排出量の削減、排出量取引の三つの手法が取られます。
削減には、国民一人ひとりのライフスタイルに起因する温室効果ガス排出量を減らすことが重要とされています。
2020年10月に日本は「2050年カーボンニュートラル」を表明し、その後の政策や計画で具体的な目標が設定されています。2030年度には温室効果ガス排出量を46%削減する目標が掲げられており、エネルギー需給の見通しでは、化石燃料の使用を大幅に削減し、再生可能エネルギーの比率を大きく増やすことが計画されています。
なぜ、環境保護に取り組むのか?
- 社会的責任(CSR):
多くの企業は、環境への影響を最小限に抑えることを社会的責任(Corporate Social Responsibility, CSR)の一環と捉えています。企業活動による環境への負荷を軽減し、持続可能な社会の構築に貢献することで、企業のイメージ向上や信頼性の獲得を目指します。 - 規制と政策への対応:
世界各国で環境保護に関する規制が厳しくなっており、企業はこれらの規制に適応するために環境保護活動を行っています。また、環境に優しい企業への税制上の優遇措置など、政府のポリシーに対応するための取り組みもあります。 - 市場と消費者の要求:
消費者意識の高まりにより、環境に配慮した製品やサービスへの需要が増加しています。環境に優しい企業としてのブランドイメージを構築することで、消費者の信頼を獲得し、市場での競争力を高めることができます。 - 経済的利益:
エネルギー効率の改善や廃棄物の削減など、環境保護に向けた取り組みはコスト削減にも繋がる場合があります。長期的には、持続可能なビジネスモデルへの移行が企業の経済的利益に寄与することが期待されます。 - リスク管理:
気候変動によるリスク(自然災害の増加など)から企業を守るために、環境保護に関する取り組みが重要です。また、将来の規制強化に対する準備として、環境への取り組みを進める企業もあります。 - イノベーションと新たなビジネスチャンス:
環境保護への取り組みは、新しい技術やビジネスモデルの開発を促進し、持続可能な製品やサービスの市場創出に繋がります。このようなイノベーションは、企業の成長機会を拡大する可能性を持っています。
本記事では、Appleがどのようにして再生可能エネルギーの利用を拡大しているのかを紹介します。
Appleの環境に対する取り組みの背景
Appleは、製品の設計から廃棄に至るまで、環境への影響を最小限に抑えることを目指しています。2030年までに全世界の事業活動および製品ライフサイクル全体でカーボンニュートラルを実現するという目標の下、再生可能エネルギーの利用拡大は中心的な役割を果たしています。
製品ライフサイクルとは???
- 設計・開発:
製品の概念が生まれ、設計・開発される段階です。
取り組み事例)
エコデザイン:環境に配慮した設計を行い、製品のエネルギー効率を高める。
長寿命設計:製品の耐久性を高め、寿命を延ばすことで廃棄物を減少させる。 - 原材料の調達:
製品を製造するための原材料が調達されます。
取り組み事例)
サステナブルな材料の使用:再生可能な材料やリサイクルされた材料の使用を増やす。
供給チェーンの最適化:輸送距離を短縮し、輸送による炭素排出を減らす。 - 製造:
設計に基づいて製品が製造される過程です。
取り組み事例)
エネルギー効率の向上:製造プロセスでのエネルギー消費を減らす。
再生可能エネルギーの活用:製造過程で再生可能エネルギーを使用する。 - 輸送・配布:
完成した製品が市場に向けて輸送・配布されます。
取り組み事例)
効率的な物流:輸送手段の選択やルートの最適化により、CO2排出を削減する。
包装材の最小化とエコ包装:包装材の使用量を減らし、リサイクル可能な材料を使用する。 - 使用:
消費者によって製品が使用される段階です。
取り組み事例)
省エネルギー性:消費者が製品を使用する際のエネルギー消費を減らす機能を備える。
メンテナンスとアップグレード:製品の修理やアップグレードを容易にすることで、製品寿命を延長する。 - 廃棄・リサイクル:
製品の寿命が終了し、廃棄またはリサイクルされる過程です。
取り組み事例)
リサイクル性の高い設計:製品やその部品がリサイクルしやすいように設計する。
製品回収プログラム:使用後の製品を回収し、リサイクルまたは適切な処分を行う。
具体的な取り組み
データセンターの再生可能エネルギー利用
Appleは世界各地のデータセンターで100%再生可能エネルギーを使用しています。アイオワ州、オレゴン州、日本など、さまざまな場所でのプロジェクトが、企業運営の持続可能性を示しています。
データセンターとは?
サーバーやネットワーク機器などのIT機器を設置・運用するために特化した施設のことです。これらの施設は、データの処理、保存、アクセスを効率的に行うために設計されており、インターネットのバックボーンを支える重要な役割を果たしています。データセンター内部には、サーバーを収納するラックが並び、ネットワーク機器を設置するスペースも用意されています。
実際にどんなのがあるの?
Googleのデータセンター
Googleは世界中に多数のデータセンターを持ち、これらの施設で検索エンジン、YouTube、Gmailなどのサービスを支えています。Googleのデータセンターは、エネルギー効率に優れており、持続可能なエネルギー源を積極的に利用しています。
Amazon Web Services(AWS)のデータセンター
AWSはAmazon.comのクラウドコンピューティング部門で、世界中にデータセンターを展開しています。これらのデータセンターは、AWSが提供する様々なクラウドサービスの基盤となっています。
Facebookのデータセンター
Facebookもまた、自社のソーシャルネットワーキングサービスを支えるために、世界各地にデータセンターを持っています。Facebookは、エネルギー効率の高いデータセンター設計に取り組んでおり、再生可能エネルギーの利用を推進しています。
新しい再生可能エネルギープロジェクト
米国やオーストラリアでの太陽光発電プロジェクト、風力発電への投資など、Appleは積極的に再生可能エネルギープロジェクトを展開しています。これにより、製品の使用段階での環境影響を抑えることを目指しています。
製品の使用段階での環境影響を抑えることを目指すとは?
消費者が製品を使用する際に消費される電力が再生可能エネルギー由来であることです。
具体的には?
Apple製品(例えば、iPhoneやMacなど)を充電または稼働させるために必要な電力を、太陽光発電や風力発電などのクリーンなエネルギー源から得ることです。
クリーンエネルギー充電機能
iOS 16に導入されたクリーンエネルギー充電機能は、iPhoneの充電を太陽光や風力などのクリーンエネルギー源が豊富な時間帯に最適化するものです。
iOS 16に導入されたクリーンエネルギー充電機能とは???
Appleが環境負荷を減らすために開発したものです。この機能は、充電が予想される時間帯の電力源を調べ、太陽光や風力など、よりクリーンなエネルギーが電力網で使用されている時に充電するように最適化します。
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もう少し、具体的に???
この機能は米国内でのみ利用可能で、位置情報サービス、システムカスタマイズ、および重要な場所を有効にする必要があり、デフォルトでオンになっていますが、必要に応じてオフに設定変更することができます。
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Power for Impactプログラム
世界中の再生可能エネルギープロジェクトをサポートするこのプログラムを通じ、Appleは地球の持続可能性に貢献しています。
具体的な取り組みは???
ソーラープラジェクトへの投資
Apple Park の設立
Appleは2014年以降、すべてのデータセンターを100%再生可能エネルギーで運営しており、Apple Parkは北米最大のLEEDプラチナ認証取得オフィスビルとなっています。この施設は17メガワットのオンサイト屋上太陽光パネルや4メガワットのバイオガス燃料電池を含む複数のエネルギー源から電力を賄い、余ったクリーンエネルギーを公共のグリッドに返しています。中国では485メガワットを超える風力および太陽光プロジェクトが開発され、製造業の上流工程からの排出問題に対処しています。日本、デンマーク、オレゴン州など、世界中の多くの地域で太陽光発電や風力発電のプロジェクトを展開し、クリーンエネルギーの利用を推進しています。
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サプライヤーとの連携
Appleはサプライヤーにも再生可能エネルギーの使用を促しており、多くのサプライヤーがこの取り組みに参加しています。これにより、製造過程でもカーボンフットプリントの削減を進めています。
社会への影響と今後の展望
Appleの再生可能エネルギーへの取り組みは、他の企業にとっても模範となり、業界全体の持続可能性への意識を高めています。今後もAppleは、技術革新を通じて環境問題への取り組みをリードしています。
まとめ
Appleは再生可能エネルギーへの取り組みを通じて、環境への影響を積極的に軽減し、持続可能な未来を目指しています。全世界の施設で使用する電力を100%再生可能エネルギー源から調達し、特に太陽光発電の導入に注力しています。新技術開発のための提携や、環境への影響を考慮した製品設計とリサイクルも重視しています。これらの努力は、業界全体の環境意識の向上に貢献し、サプライヤーにも再生可能エネルギーの使用を推奨しています。Appleのこれらの活動は、技術的進歩だけでなく、環境責任においてもリーダーシップを示しています。