FIP制度と非化石価値取引の役割

目次

はじめに

再生可能エネルギーの普及と自立化を促進するために、日本を含む多くの国々が2050年カーボンニュートラルの目標に向けて政策を導入しています。FIP制度は、再エネの市場価格に基づいた販売と、国からのプレミアム受領を特徴とする制度です。


FIP制度の概要

再エネ発電事業者は市場で発電した電力を売り、市場価格とは別に政府からプレミアムを受け取ります。このシステムは、発電量の計画と実績が一致しない場合のバランシングコストを負担することも求められます。

プレミアムとは???

再生可能エネルギーで発電した電力を市場で販売した際に、市場価格に加えて発電事業者が受け取る補助金のことです。
このプレミアムは、再生可能エネルギーの普及と自立化を促進するために設計されています。プレミアムの額は、基準価格と市場価格(参照価格)に基づいて算出され、市場価格に上乗せされる形で支払われます。

この基準価格は、FIT制度の調達価格と同様に設定され、20年間固定される見通しです。ただし、プレミアム額は毎月見直され、市場状況に応じて変動します​

基準価格とは???

再生可能エネルギーに対する補助金(プレミアム)の算出基礎となる価格です。
具体的には、政府や関連機関が定める、再生可能エネルギーで発電した電気の購入に対する固定価格のことを指します。この価格は、再エネの普及促進や技術発展の段階を考慮して設定され、長期的な視点で安定した再エネ発電の促進を目指します。

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市場価格とは???

電力の実際の取引市場で形成される価格のことです。再生可能エネルギーで発電した電気も、この市場価格に基づいて売買されます。市場価格は、供給と需要のバランスによって常時変動し、時間帯や季節、気象条件などによっても変わります。

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バランシングコストとは???

再生可能エネルギーの発電量が予測と実際の発電量との間に差異が生じた場合に、その差異(インバランス)を調整するために発電事業者が負担するコストです。再エネは天候に大きく依存するため、発電量の予測が難しく、計画通りに発電できない場合があります。
このような時、発電量の過不足に対応するための調整(バランシングが必要になり、その過程で発生するコストがバランシングコストになります。
バランシングコストは、電力市場の安定供給を保つために重要な役割を果たしますが、発電事業者にとっては追加の負担となり得ます。


FIP制度の種類と国際的な事例

世界各国では異なる形態のFIP制度が採用されています。日本では、市場の状況に応じて柔軟に対応できる中間的な制度が検討されています。


FIP制度とFIT制度の比較

FIT制度では固定価格での買取が行われていましたが、FIP制度では市場価格に連動して収入が変動し、より市場主導の再エネ普及が目指されています。


FIP制度のメリットとデメリット

メリット

  • 収益の拡大・確保につながる:
    再エネ発電事業者は、市場価格が高いときに電力を売ることができるだけでなく、「非化石価値相当額」の売却からも収益を得ることが可能です。この「非化石価値」とは、再生可能エネルギーで発電した電気の環境価値を数値化したもので、再エネ電力のCO2排出量ゼロの価値を市場で売買することができます。これにより、再エネ発電事業者はさらに収益源を確保できるというメリットがあります。
  • 電力市場の活性化:
    FIP制度により、電力市場が活性化すれば、安い電力会社を選べるなど、消費者にとっても経済的なメリットを受けられる可能性があります。非化石価値取引を通じて、再エネの社会的価値を高め、より多くの参加者を市場に引き寄せることが期待されます。
非化石価値とは???

化石燃料を使用せずに生産された電力(再エネ電力)が持つ環境的価値を表し、再生可能エネルギーなどから生成された電力に与えられます。

非化石価値の価格はどう決定する???

非化石価値取引市場で取引され、その価格は市場の供給と需要によって決まります。

デメリット
  • 収益の見通しが不明瞭:
    FIP制度は、時間帯やシーズンによる価格変動のみならず、気候や市場価格への大きな影響により、収益の見通しが不明瞭となりやすい点がデメリットです。非化石価値相当額の市場価格も変動するため、事業計画においてこれらの要素を考慮する必要があります。

まとめ

FIP制度は、再生可能エネルギーの普及と市場活性化に貢献する重要な制度です。市場価格に連動した収益機会を提供することで、再エネ事業者の自立を促し、最終的には消費者にとってもメリットのある電力市場を実現することが期待されます。
しかしながら、市場の変動性への対応バランシングコストの管理など、いくつかの課題が残ります。これらの課題を乗り越えることで、日本は2050年のカーボンニュートラル実現に向けた大きな一歩を踏み出すことができるでしょう。

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