新たな電力市場取引

目次

はじめに

日本の電力市場は、2016年の完全自由化以降、大きな変革を迎えています。この自由化により、消費者は電力供給会社を選ぶ自由を得ると同時に、より多様なエネルギー源からの供給が可能となりました。

しかし、市場の競争が激化する中で、電力市場の安定した運営も課題になっています。

本記事では、日本の電力市場の基本構造、複数の市場について、初学者にもわかりやすく解説します。


日本の電力市場の基本構造

日本の電力市場は大きく以下のように分けられます。

実際に電力が受渡しされるまでを時間軸で表記したものが以下の通りです。

SPOT市場(前日市場)
・概要:翌日の電力を前日に取引する市場。
・特徴:事前に需要と供給を予測して売買を行うため、計画的に電力を確保できます。

時間前市場(当日市場)
・概要:当日の需要変動に対応するため、1時間前までに電力を調整する市場
・特徴:当日の急な需要変動に対応することができ、柔軟な調整が可能です。

需給調整市場(当日市場)
・概要:当日の電力供給をリアルタイムで調整する市場。
・特徴:電力の不足や過剰を調整し、電力の安定を維持する。

 

卸電力市場(スポットマーケット)

日本卸電力取引所(以下、JEPX)は、電気の現物を取引する卸電力市場(時間前市場)を開設している。市場の参加者は、一般送配電事業者の供給区域(以下、エリアを指定することになり、エリア間の連系線の制約により市場価格が異なる場合がある。


小売電気事業者は自社で保有する発電設備や発電事業者との相対契約による電気の調達に加えて、JEPXに会員登録して卸電力市場を通じて電気を調達する。

発電事業者は、自社の発電能力のうち相対契約や調整力などを除いた余剰電力については卸電力市場に販売して売電収入を得ることができる。これまで、発電事業者は発電事業の発電可変費で市場に電気を販売することが多く、比較的安価な電力を小売電気事業者は調達している
ただし、需要ひっ迫においては一時的に市場価格が高騰する状況も生じている。
卸電力市場は電気の現物を取引する市場であることから、小売電気事業者および発電事業者は、市場取引が成立した電気の受渡時に会計処理を行うことになる。スポット市場ではシングルプライスオークション方式、当日市場ではザラバ方式を採用している。

参考サイト(詳細は➡卸電力市場


ベースロード市場

新電力によるベースロード電源石炭火力・一般水力・原子力・地熱)へのアクセスを容易にすることを目的とし、旧一般電気事業者および電源開発(株)が保有するベースロード電源の電気の供出を制度的に求め、新電力が年間固定価格で購入を可能とする市場である。

取引の対象となるベースロード電源は受渡期間1年の商品で翌年度受渡しの電力量(kWh)であり、その供出による電気の受渡しはJEPXを通じて行い、供出価格には上限価格を設定している

オークションはシングルプライス方式で、3つの市場範囲(市場分断状況を踏まえ北海道、東北、東京、西の各エリア)の区分で、原則として受渡の年度の前年度に4回(7月、9月、11月、1月)実施しており、1月の開催回では、旧一般電気事業者およびおよび電源開発(株)のベースロード市場への参加は任意としている。

ベースロード市場における取引は、転売制限や購入制限といった制度的な制約が課せられる。また、発電事業者は電力を市場に供出するのみで買い戻しはできず、発電事業者、小売電気事業者には1日前市場を通じて約定した量の電気の売却と購入が求められる

参考サイト(詳細は➡ベースロード市場ガイドライン


容量市場

電力市場の自由化の進展再エネの導入拡大に伴い生じる公益的な課題に対応するために創設された卸電力市場の取引量の拡大や再生可能エネルギーの導入拡大は安い電気料金の実現や需要家の選択肢の拡大に貢献する。一方で、発電設備の投資回収の不確実性を高める一因にもなっている。

今後も安定供給を維持し、カーボンニュートラルに向けて自然変動電源を中心とした再生可能エネルギーの主力電源化にも対応するためには、建設に長期間要する発電所の設備投資の判断において投資回収の予見性を高める必要がある

このため、将来の発電することができる能力、すなわち供給力kW価値を取引する市場として容量市場が開設された。容量市場においては、発電事業者は実際に電気使用される年度(実需給年度)の4年前に電力広域的運営推進機関(OCCTO)が実施するオークションで供給力を入札することで、電源の投資回収の予見性を高めることが可能となる。

一方で、小売電気事業者は電気事業法による供給力確保義務を履行するため、容量市場で確保された供給力の対価を負担する。

発電事業者は、容量においてオークションに応札し取引が成立した場合、4年後の実需給年度において供給力を提供し、提供した供給力の対価として容量確保契約金額を受け取ることになる

したがって、実際に供給力を提供した時点で供給力の対価を売上計上することになる
また、小売電気事業者も容量市場で成立した取引に基づき容量拠出金を支払うことになるが、実際に供給力が提供された時点で費用を計上するこになる。

参考サイト(詳細は➡容量市場


需給調整市場

一般送配電事業者が電力供給区域の周波数制御需給バランス調整を行うために必要となる調整力について、多くの電源などへの参加機会の公平性確保調達コストの透明性適切性の確保の観点から公募により調達を実施している。より効率的な需給運用の実現を目指すために公募調達に加え2021年4月よりエリアを超えた広域的な調整力の調達を行う需給調整市場を開設している。

この市場は、各エリアの一般送配電事業者が市場運営者となり、調達を希望する調整力の必要量を提示し、調整力の提供事業者は当該必要量に対して入札する。需給調整市場では、応動時間の遅い三次調整力②から導入され、応動時間の速い調整力へ商品が拡大される予定である。

需給調整市場への参加にあたり、調整力提供事業者は性能確認等の事前審査を受けたうえで、一般送配電事業者需給調整市場に関する契約を締結する。当該契約に基づき、需給調整市場で成立した取引について会計処理を行う。

参考サイト(詳細は➡需給調整市場


非化石価値取引市場

非化石価値取引市場は、エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の使用および化石エネルギー原料の有効な利用促進に関する法律エネルギー供給構造高度化法)により求められる義務を達成するため、同法2条2項に規定する非化石エネルギー源に由来する電気の非化石源としての価値を証書化し取引することを可能にするために創設された市場である。

非化石証書にはFIT非化石証書(再エネ指定)、非FIT非化石証書(

 

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