はじめに
分割供給および部分供給は、日本の電力市場における重要な供給形態であり、特に再生可能エネルギーの普及や新電力の参入促進に寄与してきました。しかし、近年ではこれらの制度の見直しが進められ、2024年には部分供給の廃止が検討されています。本記事では、部分供給の歴史、現在の課題、そして分割供給の今後の展望について詳しく解説します。
部分供給の背景と導入
部分供給は、2013年に新電力の参入促進と電力需給の調整を目的として導入されました。特に、東日本大震災後の電力需給の逼迫を受け、新電力の持つ発電能力を効果的に活用するために設けられました。この制度の下で、新電力が供給力を十分に持たない場合、旧一般電気事業者(みなし小売電気事業者)が不足分を補い、電気が一体として供給されます。
参考サイト(詳細は➡:経産省資料
部分供給の類型
部分供給の類型には、横切り型、通告型、縦切り型の3種類があります。それぞれの特徴を以下に説明します。
1. 横切り型
横切り型は、みんなが一緒に電気を送る方法です。新しい電気会社と昔からある電気会社が同じ電線を使って、一緒に電気を送ります。電気の時間や量を決めずに、両方の会社が同時に協力して電気を届けます。だから、どっちの会社から来た電気かは分からないですが、一緒にみ需要家のもとへ届きます。
2. 通告型
通告型は、時間を決めて電気を送る方法です。どの時間にどれくらい電気を送るかをあらかじめ決めておきます。例えば、「お昼の時間は新しい電気会社が送るよ」とか、「夜は昔からある電気会社が送るよ」という風に、どの時間にどの会社が電気を送るかを事前にお知らせして計画します。
3. 縦切り型
縦切り型は、時間ごとに電気を分けて送る方法です。例えば、「お昼の間は新しい電気会社が全部送るよ」、「夜は昔からある電気会社が送るよ」と、時間でしっかり役割を分けて電気を送るる方法です。時間ごとに誰が電気を送るかをしっかり分けているから、いつ、どの会社から電気が届くかが分かります。
部分供給の制度趣旨にそぐわない活用事例
部分供給制度の本来の目的は、新電力が不足する供給力を補うためでしたが、競争環境のイコールフッティングを確保するという観点から、近年では制度趣旨に反する事例が確認されています。例えば、通告型部分供給では、JEPX(日本卸電力取引所)の価格が安い時間帯に新電力が全量を調達し、価格が高い時間帯にはみなし小売電気事業者に電力供給を任せるという取引が行われていることが確認されました。このような取引は、電力調達コストを最小化することを目的としており、制度の本来の趣旨を逸脱しているとみられます。
新電力は、電気が安い時だけ自分で電気を買います。しかし、電気が高くなると「もう買わないよ」と通告して(正確には事前に伝える)、他の大きな電気会社(旧一電)に電気を送るのを任せます。だから、新電力はいつも安く電気を手に入れて、お金を節約できます。
本来の部分供給制度は、新電力の供給力が足りない部分を旧一電が補うというものです。
部分供給の今後の扱い
昔は、部分供給という仕組みが一時的なサポートとして使われていました。これは、新しい電気会社がうまく電気を供給できるように、古い電気会社が少し手助けする仕組みでした。
でも今では、ベースロード市場の創設や卸電力市場の拡大によって、新しい電気会社もたくさん電気を供給できるようになって、もう手助けがいらなくなってきました。だから、この部分供給の仕組みはもう必要なくなったと考えられ、廃止する方針が出されています。
さらに、部分供給のうち、「通告型」という特別なやり方については、新しく始めることをやめるという決まりも作られていて、今までの契約も見直していく予定です。
分割供給とその類型
分割供給は、複数の小売電気事業者が1つの需要家に電力を供給する仕組みです。需要追随供給と非需要追随供給という形態があり、それぞれが異なる役割を果たします。
- 需要追随供給
電気を使う量が変わったら、それに合わせて電気の量も増やしたり減らしたりすること。 - 非需要追随供給
決まった量の電気をずっと同じ量で送り続けること
以下、供給形態のイメージ① 需要追随 + 非需要追随
(= 片方の供給者が電気を調整するが、もう片方は調整しないやり方)
1つの会社は電気を必要な量に合わせて増やしたり減らしたりするけど、もう1つの会社は決まった量の電気を送る方法。
② 需要追随 + 需要追随
(= 両方の会社が電気を調整するやり方)
②には、大きく2つのやり方が存在する。
・②-1 30分ごとに両方の会社が同時に電気を送る(コマ分割型)
両方の会社が同じ時間に電気を調整しながら送ります。
・②-2 30分ごとに、どちらか一方が単独で電気を送る(時間分割型)
1つの時間枠では1つの会社だけが電気を送って、その次の時間枠で別の会社が電気を送るように、時間で分ける方法です。
分割供給と部分供給の時の「お金の調整」
分割供給では、2つの電気会社が1つのお家や工場に電気を送ります。この時、それぞれの会社が自分の部分の電気を送りますが、お金を払う時に「どっちがいくら払うか」を公平に決めるための調整が必要です。
たとえば、新電力と旧一電が2人で1本の電線を使って電気を送るので、その使用料(託送料金)を公平に分ける必要があるんだよ。この分け方を「流通費用調整」と言います。
どうやって調整するの?
① 同じ電線を使う場合、
新電力と旧一電の基本料金の合計が、1社で送る時と同じになるように計算します。
② 電気をたくさん送る会社が多く払い、もう1つの会社も残りの少額を支払います。。
つまり、両方の会社が使った分のお金をちゃんと払うように、お金を公平に分けて調整を行います。
まとめ
部分供給制度は、当初の目的を果たし、現在ではその役割を終えつつあります。一方、分割供給は今後も再エネ利用の拡大に寄与し、適切な託送料金の調整や供給形態の改善が求められています。今後、電力市場のさらなる発展に向け、制度の透明性と公平性が重要な課題となります。
参考サイト(詳細は➡:
・JAPAN NRG
・RTSコーポレーション
・経産省