オプション取引

目次

はじめに

オプション取引は、金融商品の中でも高度な戦略と柔軟性を持つ手法の一つです。株式、指数、通貨、商品などを対象にしたこの取引は、投資家に市場の上昇・下落の両方で利益を得るチャンスを提供します。しかし、魅力的な可能性を秘める一方で、リスクや複雑性も伴います。本記事では、オプション取引の基礎知識から形態、仕組み、決済方法まで、初心者にもわかりやすく解説します。


オプションとは何か?

オプションとは、特定の資産を将来のある時点で、あらかじめ定められた価格で「買う権利」または「売る権利」を取引する金融契約です。

購入者は「権利」を持つものの、「義務」は負いません。この柔軟性がオプション取引の大きな特徴です。

① 原資産
 株式、指数、通貨、商品など、多岐にわたる金融商品などが対象となります。

② 取引目的
 投資利益を狙う「投機目的」、あるいは市場リスクを軽減する「ヘッジ目的」が一般的です。

例えば、株価が上昇すると予想する場合、コールオプションを購入して値上がりの恩恵を受けることができます。


オプションの形態とキャッシュフロー

オプションの種類: コールとプット

オプションには、コールとプットの2種類が存在します。

例えば、

コールオプションは、権利行使価格1200円の場合、株価が1300円に上昇すると、1300円の資産を1200円で購入できるため、100円の利益を得られます(プレミアムを差し引く前)。

プットオプションでは、権利行使価格1,200円の場合、株価が800円に下落すると、800円の価値の資産を1,200円で売却できるため、400円の利益を得られます(プレミアムを差し引く前)。

 

オプションの対象:現物と先物

オプションには、現物資産(株式や商品など)を対象にした取引と、株式指数や先物契約を対象にした取引があります。現物オプションは個別資産の動きに対応し、インデックスや先物オプションは市場全体のリスク管理や効率的な取引に適しています。それぞれの特徴を理解して目的に応じて活用しましょう。

項目 現物オプション 先物オプション
対象資産 株式、商品(金、原油等)、通貨、不動産等 先物契約(株式指数、金利、エネルギーなど)
権利行使時の決済 原資産そのものの受け渡しが一般的 先物契約の清算が一般的
市場規模 個別資産ごとに取引されるため比較的小規模 大規模な取引市場(指数、エネルギーなど)
流動性 資産により流動性が異なる 比較的高い

 


オプション取引の基本形

オプション取引には、以下の4つの基本的なポジションがあります。

コールオプション

コールオプション(特定の価格で原資産を購入できる権利)を買うか、売るかによって、利益と損失の仕組みは異なります。

コールオプションの買い手と売り手の比較表

項目 コールオプションの買い手 コールオプションの売り手
期待 原資産価格の上昇⇒ 原資産価格の変動が小⇐い、または下落⇐
利益 理論上無制限 プレミアムで固定
損失 支払ったプレミアムの範囲内 理論上無限原資産価格が大幅に上昇した場合
リスク許容度 リスクは低い(損失が限定的) 高リスク(大きな損失の可能性がある)
市場での立場 リスクをとって利益を狙う投資家 リスクを引き受け、プレミアムを収益とする投資家
キャッシュフロー プレミアムを支払う
権利行使により利益を得る場合がある
プレミアムを受け取る
権利行使時に損失が発生する場合がある

プットオプション

プットオプション(特定の価格で原資産を売却できる権利)を買うか、売るかによって、利益と損失の仕組みは異なります。

プットオプションの買い手と売り手の比較表

項目 プットオプションの買い手 プットオプションの売り手
期待 原資産価格の下落⇐ 原資産価格の安定、または上昇⇒
利益 原資産価格がゼロになった場合、
権利行使価格との差額
プレミアムで固定
損失 支払ったプレミアムの範囲内 原資産価格がゼロになった場合、
権利行使価格との差額
リスク許容度 リスクは低い(損失が限定的) 高リスク(大きな損失の可能性がある)
市場での立場 リスクをとって利益を狙う投資家 リスクを引き受け、プレミアムを収益とする投資家
キャッシュフロー プレミアムを支払う
権利行使により利益を得る場合がある
プレミアムを受け取る
権利行使時に損失が発生する場合がある

 


オプションの価値

オプションの価値は、権利行使によって利益が得られるかどうかを数値化したもので、「内在価値」と「時間価値」の2つの要素で構成されます。オプションを行使する価値がある場合イン・ザ・マネー(ITM)といい、権利行使する価値がない場合をアウト・オブ・ザ・マネー(OTM)と呼びます。また、原資産価格と行使価格が一致する場合はアット・ザ・マネー(ATM)といいます。

コールオプションの価値

コールオプションは、原資産を特定の価格で購入する権利を持つオプションであり、その価値は以下の2つの要素からなります。

項目 イン・ザ・マネー(ITM) アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)
コールオプションの場合 権利行使価格<原資産価格 原資産価格 < 権利行使価格
権利行使のメリット 権利行使により利益が得られる状態 権利行使しても利益が得られない状態
内在価値 0<本質的価値 本質的価値 = 0
オプションの価値
(プレミアム)
本質的価値 + 時間価値が含まれる 時間価値のみ
(将来の価格変動への期待による価値)
権利行使の判断 権利行使するのが一般的 権利を行使せず放棄するのが一般的
例(コールオプション) – 原資産価格: 1,200円
– 権利行使価格: 1,000円
ITM(利益: 200円)
– 原資産価格: 900円
– 権利行使価格: 1,000円
OTM(価値なし、放棄)

プットオプションの価値

プットオプションは、原資産を特定の価格で売却する権利を持つオプションであり、その価値は以下の2つの要素からなります。

項目 イン・ザ・マネー(ITM) アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)
プットオプションの場合 原資産価格 < 権利行使価格 権利行使価格<原資産価格
権利行使のメリット 権利行使により利益が得られる状態 権利行使しても利益が得られない状態
内在価値 0<本質的価値 本質的価値 = 0
オプションの価値
(プレミアム)
本質的価値 + 時間価値が含まれる 時間価値のみ
(将来の価格変動への期待による価値)
権利行使の判断 権利行使するのが一般的 権利を行使せず放棄するのが一般的
例(プットオプション) – 原資産価格: 800円
– 権利行使価格: 1,000円
ITM(利益: 200円)
– 原資産価格: 1,200円
– 権利行使価格: 1,000円
OTM(価値なし、放棄)

まとめ

オプション取引は、高度な取引戦略を可能にする反面、リスクも大きい投資手法です。そのため、次のポイントを押さえて取引することが重要です。

  1. 基本的な仕組みを理解すること。
  2. 投資目的(投機・ヘッジ)に応じて適切な戦略を選択すること。
  3. リスクを適切に管理し、損失を最小限に抑えること。

オプション取引をうまく活用すれば、市場の変動を最大限に利用しつつ、リスク管理を徹底した投資を実現できます。

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