はじめに
石油は現在、世界で最も多く使われているエネルギー資源であり、その需給状況は世界経済や国際政治に大きな影響を与えています。1970年代の2度の石油危機以降、エネルギーシェアは低下しましたが、2021年時点でも世界のエネルギー消費の31%を占め、最大のエネルギー源であり続けています。
石油がこれほどまでに国際的に取引される理由のひとつは、液体であることによる輸送面での利便性にあります。他の化石燃料と比較すると、石油は国際貿易に適した特性を持っています。
- 石炭:固形物であり輸送効率が低く、重量あたりのエネルギー効率も悪い。
- 天然ガス:気体のため輸送コストが高く、液化やパイプライン建設が必要。
液体である石油は効率的に輸送できるため、大型タンカーの開発とともに国際取引の規模を急速に拡大させました。
石油のTOP3
生産量ランキング(TOP3)
1位:アメリカ(約1600万バレル/日)
2位:ロシア(約1100万バレル/日)
3位:サウジアラビア(約1000万バレル/日)
※ロシアとサウジアラビアの生産量は過去3か年生産量が均衡している。
消費量ランキング(TOP3)
以下は、2021年~2023年の石油消費量TOP3比率のまとめです。
1位:アメリカ(1868万バレル/日)
2位:中国(1544万バレル/日)
3位:インド(488万バレル/日)
埋蔵量ランキング(TOP3)
以下は、2018年~2020年の埋蔵量TOP3比率のまとめです。
1位:ベネズエラ(約3038億バレル)
2位:サウジアラビア(約2975億バレル)
3位:カナダ(約1681億バレル)
シェール革命
アメリカは最新技術によって頁岩層から石油やガスを掘り出すシェール革命によって石油生産量を急増させました。
2005年には約600万バレル/日だった生産量は2023年には約1700万バレル/日に達し、輸出国へと変貌しました。
中東諸国も依然として石油供給において重要な役割を担っています。中東産の石油は生産コストが低く、競争力を維持しています。
石油価格と供給の安定性
石油価格は、供給の安定性や地政学リスクによって大きく変動します。主要輸入国であるアメリカ、中国、日本はそれぞれ異なる供給ルートを確保しています。
- ホルムズ海峡、マラッカ海峡などのチョークポイントは、石油輸送の要所です。
- これらの地域が封鎖されると、世界的なエネルギー供給に重大な影響を及ぼします。
1973年の第一次オイルショックでは、日本の物価上昇率が急上昇し、経済に深刻な打撃を与えました。
ーーーちなみに
中国は陸路と海路を利用して中東から石油を輸入しています。EUはウクライナ侵攻前はロシア産の原油に大きく依存していましたが、現在は中東をはじめとする他地域の原油に頼らざるを得ない状況です。
中東警察の変化
アメリカはこれまで中東の安定維持に中心的な役割を果たしてきましたが、近年その影響力は低下しています。アフガニスタンからの撤退や自国優先主義の傾向がその背景にあります。
その間隙を突くように、中国は中東での影響力を強化しています。中国はサウジアラビアやイランと経済協力を進め、石油供給の安定確保を目指しています。
アメリカは同盟国である日本やインド、オーストラリアにさらなる貢献を求める可能性があり、日本にとって石油をめぐる地政学的な変化への対応が求められるでしょう。
まとめ
石油は今後も世界のエネルギー供給において重要な役割を果たし続けます。しかし、シェール革命による生産の変化や中東の地政学リスク、アメリカと中国の影響力争いなど、国際情勢は複雑さを増しています。
日本をはじめとする消費国は、エネルギー安全保障の観点から多様な供給ルートの確保と国際協力の強化が不可欠です。同時に、再生可能エネルギーの推進や脱炭素化による持続可能なエネルギー政策も併せて進める必要があります。